マリア・ティーポ メモリアルイベント@東京 ~ マスタークラス通訳を担当しました ~

7月13日~16日にかけて東京で開催された、「マリア・ティーポ メモリアルイベント」に参加してきました。

故マリア・ティーポ女史は、ヨーロッパで絶大な人気を誇っていたピアニストです。彼女はご家族との時間を何より大切にされ、60歳で演奏活動を引退されたこともあり、日本ではその名を知る人は多くありません。教育者としても名高く、長年フィレンツェのフィエーゾレ音楽学校にて教鞭をとられていました。

私は先生が退官される直前の一年間、ご指導いただきましたが、その数年後にミュンヘン音大に進学した際には、ピアニストでもあった当時の学長から「ティーポの演奏はとても素晴らしかった。先生はお元気?」と声をかけられたことを覚えています。

この特別なイベントは、門下生でもあったピアニスト三浦薫さんの尽力によって実現しました。

マスタークラス@ファツィオリ ショールーム

13、14日はファツィオリ・ショールームにて、故ティーポ女史の愛弟子であったアンドレア・ルッケシーニ氏、ご令嬢でヴァイオリニストのアリーナ・カンパニー氏によるピアノと室内楽のマスタークラスが行われました。私は14日午後のマスタークラスで、通訳を担当しました。

ルッケシーニ先生がレッスン中に何度も口にされていた、ピアノを歌手が歌うように歌わせるということ。そのための具体的な指使いやアーティキュレーション。そして、室内楽の名手としても名高い先生ならではの、「ここはホルンのような響きで…、ここはヴィオラのように…」と次々に生み出されるフレーズの歌いまわしと多彩な音色の引き出し。通訳をしながら、歌曲伴奏にも通じる多くの示唆を得ました。

続くアリーナ先生のレッスンは、ブラームスのヴァイオリンソナタ第一番。通称「雨の歌」です。先生が、音楽用語の裏にある真の意味について、受講生に何度も問いかける姿が印象的でした。その意味を楽器でどう表現するかをベースに、ヴィブラートの入れ方、腕の脱力といった技術面まで、「言葉を紡ぐように、音で語ること」を目指すレッスンでした。受講生の音質、音量までもがみるみる変わっていく様子は圧巻!さらに途中からルッケシーニ先生も加わって、細やかなピアノとのバランスの指示。お二人が、「曲自体の情報量が多すぎて、とても一時間じゃ終わらない!」と仰られていたのが印象的でした。

メモリアルトーク@イタリア文化会館

15日のトークイベントでは、アンドレア・ルッケシーニ氏、アリーナ・カンパニー氏、フィエーゾレ音楽学校教授でルッケシーニ氏の奥様でもあるヴァレンティーナ・パーニ氏、そして日本のピアニスト関孝弘氏がそれぞれ登壇し、ティーポ先生との思い出や、生い立ちを語られました。

細かく厳格なペダリング、奇術師のようにバリエーションに富んだ運指法、耳で聴いて身体に落とし込むレッスン。一度決めたことは曲げない芯の強さと、家族や弟子に対する愛情深さ。彼らのお話を聞きながら、当時先生がレッスンで話されていた言葉の断片たちが、一本の線で再び繋がったような感覚になりました。

メモリアルトーク後に、高校時代からあこがれていた、関先生ともお話しできて感無量です!

一歳児を連れての参加だったため、全日程での参加はかないませんでしたが、歌心あふれるイタリアンピアニズムの神髄に触れ、その伝統が今も、そしてこれからも受け継がれていくことを実感できた二日間でした。